小説「夜明けの街で」東野圭吾著 を読んで

 東野圭吾の「夜明けの街で」を三洋堂書店の中古本110円コーナーで購入した。人気作家の本で棚には豊富に在庫があった。このタイトル2冊あったが汚れの少ない方を選んでセルフレジで会計をしたら何故か料金88円だった。東野圭吾の著作を買うのも読むのも初めてである。基本的に日本人作家の小説を読むことが少ないので中々読む機会が無かった。初めて読むことになったのだが東野圭吾のことはまるで知らなかった訳ではなくある理由でこの小説家のことは時折情報を得ることになる。というのは、自分が勤めていた会社に東野圭吾が5年ほど勤めていたことがありたまに社内で話題になったりかつて賞を取った時の記者会見のエピソードがイントラネットで照会されたことがあったりして頭の片隅に残っているのである。ネットで著作が話題になったり原作が映画化されたりした情報を見るたびググっては会社員時代のエピソードを読んで多少の共感を持ったり変な偏見を持ったりする。まあ成功者に対する嫉妬、やっかみがあるのが本音といえば本音。



妻子ある男が派遣社員と盲目的な恋に落ち家庭と愛人の間で揺れ動き合理的な判断が出来なくなっていく過程がよく描かれている。頁の殆どが派遣社員との逢瀬に費やされており読んでいて嫌になってくる。謎解きの部分は、不自然な決着を付けられていて釈然としない思いが残る。映像化するには面白い設定かも知れないがミステリーとしてはダメだ。結局、不倫などしてみても何も良いことがないという結論に結びつける為の要素なんだろう。ふと思ったのは、これはイタリア映画の「わらの男」と根っこは同じなんじゃないかということである。「わらの男」観たことはないがググればあらすじは出てくるし詳細から結末まで情報は得られる。結論 渡部=わらの男

登場人物の設定の考察
渡部
年齢39歳
建設会社勤務 所属 電気課 役職 主任  業務 照明機器等電気施設工事の企画、施工、メンテ 課長1人 課員26人(派遣社員含む)
住居 2年前に都心の分譲マンション2LDK購入 フラット35で頭金ゼロの3500万円ローン組んだら35年で7000万円返済 毎年200万円返済
車 RV 車を残価設定ローン組んでいたら500万円の車で3年後の残価250万円として3年間毎年83万円ほど返済 賃貸駐車場が月2、3万かかるんじゃないか
家族 妻と娘(4歳)

この設定は相当に無理がある。大手建設会社としても大卒39歳の年収で都心のマンション住まい、マイカーがRV これで亭主がお小遣い制でなくて自由に金が使える。あり得ない 本来なら家計はカツカツ 不倫などしてる場合ではない 愛人との秘密のマンション賃貸を考えるなどもっての外
それと分からないのが職場で同じ課にいて秋葉の業務内容を全く把握していない。26名くらいの課なら週1ミーティングで業務フォローは、していて全員で業務進捗の共有をしてるはずだ。
あともう一つ 勤務に自由がありすぎ 主任だと毎日業務に没頭して残業で遅くなるまで働くはず 真面目にやれといいたい 

仲西秋葉
年齢31歳
派遣社員 建設会社に3月31日までの勤務で派遣されている
所属 電気課
業務内容 技術系の部署なので一般事務員より高度な技術、技能が求めれているはずで電気関係の図面作成、見積もり、申請書類等作成でアシスタント業務をこなしていそうである。
住居 都心のマンション住まい 派遣社員の給料では無理なので父親が買い与えている可能性が高い
車 ボルボXC70 新車で600万円くらいで派遣女子らしくない 父親が買い与えたものだろう
金銭面 収入は少ないはず 派遣だと正社員の半分〜7掛け程度だろう ただ住居費用は父親が負担してそうで 貯金もせず給料を全額使い切るような生活スタイルだろう 足りなければ親がお小遣いを出すのだろう
交友関係 謎 女友達との付き合いとか習い事とか本来なら有りそうだが渡部の要求に素直に応じている場面が多い。男に都合よく女が予定を合わせてくれるなんてそうそうあり得ない。早く気づくべきだった。

謎解きの考察
15年前実家のリビングで秘書が胸にナイフを刺されてテーブルに仰向けに倒れて死んでいた。そのそばで16歳の秋葉が倒れて意識を失っていたのを叔母が発見し父親を呼んだ。父親到着後 父親が通報。リビングの窓は開いていて指紋など犯人の痕跡は無し。近隣での目撃者もなしで警察の捜査もゆきづまり迷宮入り。3月31日午前零時で時効成立。

背景
秋葉の母親は事件の2ヶ月前に自殺 うつ病で服薬していた。
秋葉の父親と秘書は不倫していた。

時効成立後の秋葉の告白
秘書は遺書を残して自殺していて遺書には父と叔母が不倫していることが書かれていた。目撃した秋葉は2階の部屋に戻り睡眠薬を飲んで眠る。訪れた叔母が秘書の死体を発見して父親を呼ぶ 二人は事態を誤解して秋葉が犯人だと思い込み秋葉が罪にならないように窓を開け偽装工作をして警察を呼んだ。秋葉は時効成立まで真相を一切語らず父と叔母の不倫という真実を胸に秘めたまま時効の日を迎えた。たまたま派遣先で出会った渡部は秋葉の父と叔母への復讐に利用されただけだった。

ちょっとあり得ない真相で拍子抜けした。16歳の少女が31歳になるまで秘密を背負い続けるのは考えられない。無理に話を作っていて結局不倫の方がテーマになっていてミステリーの方は不倫の結末のお膳立てになっているのである。

ホワイトデイの時点で窓は全て鍵が掛かっていた事実が分かり外部からの侵入者は無く密室殺人が確定していた。ここから推理すると密室に父と叔母もいたと考えたくなる。当事者による共犯の殺人が濃厚で父と叔母の不倫の線が浮上してくるのである。事実を知っている秘書は、実は二人を揺すっていたという事であれば殺害の動機が出てくる。秋葉まで共犯はありえないので秋葉は殺害前に眠らされた。ミステリーならこういった推理をしたくなる。まあこれでは渡部と秋葉の不倫など不要になってしまって作者の意図から外れてしまうのだろう。まあ作者の意図したプロットなのだろうがイマイチな話だ。

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